チャートに、山が3つ並んだ形が現れることがあります。真ん中の山がいちばん高く、左右の山はそれより低い——人の頭と両肩に見えることから、この形はヘッドアンドショルダーと呼ばれます。日本では「三尊天井(さんぞんてんじょう)」という呼び方のほうがなじみ深いかもしれません。
数あるチャートパターンのなかでも、天井を知らせるサインとして最もよく知られている形です。この記事では、なぜこの形が現れるのかという理由から、見分け方、目標値の計算方法、そして「だまし」への備え方までを順番に説明します。
この記事でわかること
- ヘッドアンドショルダー(三尊天井)の形と各パーツの名前
- なぜこの形が天井のサインになるのか、その裏側にある相場心理
- 本物かどうかを見分ける4つのチェックポイント
- ネックラインから下値目標を計算する方法
- 逆ヘッドアンドショルダー(逆三尊)と、だましへの対処法
ヘッドアンドショルダー(三尊天井)とは? 3つの山と1本の線でできた形
ヘッドアンドショルダーは、上昇トレンドの終わりに現れる代表的な反転パターンです。構成しているのは、3つの山と、その谷を結んだ1本の線だけです。
| 名前 | チャート上の位置 | 意味すること |
|---|---|---|
| 左肩 | 最初の山 | 上昇トレンドの途中でついた高値 |
| 頭 | 真ん中の最も高い山 | トレンドの最高値。ここが天井になる |
| 右肩 | 3つ目の山 | 頭に届かなかった高値。買いが続かなかった証拠 |
| ネックライン | 2つの谷(安値)を結んだ線 | パターンの成立・不成立を分ける境界線 |
大切なのは、このパターンが完成したと判断するタイミングです。3つの山が見えている段階では、まだ「そう見える形」にすぎません。株価が右肩をつけたあと、ネックラインを明確に下抜けた瞬間にはじめて完成と見なします。
なぜこの形が天井のサインになるのか
形を丸暗記するよりも、そのあいだに何が起きているかを追ったほうが、実戦では役に立ちます。3つの山ができる過程を順番に見ていきましょう。
- 左肩:上昇が続いたあと、利益確定の売りでいったん下げます。まだ買いたい人が多いため、押し目買いが入って再び上昇します。
- 頭:高値を更新します。ただしここで「さすがに高い」と感じた投資家の売りが増え、左肩のときより深く下げます。
- 右肩:もう一度買われるものの、頭の高値には届きません。この時点で「もう上がらない」と判断した参加者が売りに回り始めます。
- ネックライン割れ:これまで下値を支えていた買いの層が崩れます。上昇局面で買った人の損切りも加わり、下落が加速します。
つまりヘッドアンドショルダーとは、買う力が3回にわたって少しずつ弱っていく過程が、そのまま形になったものです。「天井を当てる魔法の形」ではなく、勢いの衰えの記録だと考えると腑に落ちやすくなります。

「三尊」という呼び名は、中央に大きな仏像、その左右に小さな仏像が並ぶ配置から来ているといわれます。
名前の由来はさておき、この形が世界中で注目されるのは、「高値を更新できなくなった」という事実が誰の目にもはっきり見えるからだと思います。
私は形そのものを当てにいくというより、買い手の勢いを測る物差しとして眺めるようにしています。
本物かどうかを見分ける4つのチェックポイント
山が3つ並んでいれば何でもヘッドアンドショルダー、というわけではありません。次の4点を確認すると、精度がぐっと上がります。
- ①その前に上昇トレンドがあるか:天井を示すパターンなので、そもそも上げてきた相場でなければ意味を持ちません。横ばい相場の中の3つの山は、ただの凸凹です。
- ②頭が左右の肩より明確に高いか:3つの高さがほぼ揃っているなら、それは三尊ではなくレンジ(もみ合い)と考えたほうが素直です。
- ③左右の肩のバランス:完璧な左右対称である必要はありません。ただし右肩が極端に小さい、あるいは形成に時間がかかりすぎる場合は、信頼度が下がります。
- ④出来高が右肩下がりか:左肩>頭>右肩の順に出来高が細っていれば、買いの勢いが実際に落ちている裏づけになります。逆にネックラインを割った日の出来高が急増していれば、売りの本気度が高いと読めます。
とくに④の出来高は、形だけでは分からない参加者の熱量を教えてくれます。ローソク足と一緒に、必ず下段のグラフも確認する習慣をつけたいところです。
下値目標の計算方法 引き算1回で出せる
このパターンが実用的なのは、「どこまで下がりそうか」の目安を数字で出せる点にあります。使う計算は次の2行だけです。
- 値幅 = 頭の高値 - ネックラインの価格
- 下値目標 = ネックラインの価格 - 値幅
たとえば、頭の高値が3,000円、ネックラインが2,600円だった場合はこうなります。
- 値幅 = 3,000円 - 2,600円 = 400円
- 下値目標 = 2,600円 - 400円 = 2,200円
ネックラインを割ったあと、2,200円あたりが一つの目安になる、という読み方です。ただしこれは「必ずそこまで下がる」という予測ではありません。利益確定や買い直しを検討する候補地点、くらいの位置づけで使うのが適切です。
逆ヘッドアンドショルダー(逆三尊)は底のサイン
この形を上下ひっくり返したものが、逆ヘッドアンドショルダー(逆三尊)です。下降トレンドの終わりに現れ、底打ちの可能性を示します。
- 谷が3つ並び、真ん中の谷がいちばん深い
- 2つの戻り高値を結んだ線がネックラインになる
- ネックラインを上抜けたところで完成
- 上値目標 = ネックライン +(ネックライン - 頭の安値)
考え方はまったく同じで、売る力が3回かけて弱っていく過程を表しています。底値圏では、出来高を伴ってネックラインを上抜けているかどうかが、とくに重要な確認点になります。
実践で使うときの3つのコツ
①完成を待ってから動く
3つ目の山が見えた時点で先回りしたくなりますが、右肩からそのまま上昇して高値を更新してしまう展開も珍しくありません。ネックライン割れ、できれば終値ベースでの確認を待つほうが、結果的に判断はぶれにくくなります。
②リターンムーブを狙う
ネックラインを割ったあと、一度その水準まで戻ってから改めて下げていく動きがよく見られます。これをリターンムーブ(戻り)と呼びます。割れた直後に飛び乗るより、この戻りを待ったほうが価格の条件がよくなり、損切り位置も近く置けます。
戻りがどこまで進むかの目安には、フィボナッチの38.2%や61.8%といった比率が使われることもあります。
※フィボナッチ:上昇(下落)した値幅のうち何割戻したかを測る手法。押し目や戻りの目安として使われます。詳しくはこちらの記事で解説しています。
③損切りラインは右肩の上に置く
ネックライン割れを見て保有株を手放した(あるいは売りで臨んだ)あと、株価が右肩の高値を超えてきたら、そのシナリオは崩れたと考えるのが自然です。エントリーの前に「どこで間違いを認めるか」を価格で決められること。これがチャートパターンを使う実務上の最大のメリットです。
ヘッドアンドショルダーの弱点と注意点
- だましが一定の割合で起きる:ネックラインを割ってすぐ戻す動きは頻繁にあります。1回の判断に資金を集中させず、分割で対応するのが現実的です。
- 後から見れば何にでも見える:過去のチャートには、それらしい3つの山がいくらでも見つかります。検証するなら、形を認定した時点を先に記録し、その後の値動きで確かめてください。
- 時間軸で結論が変わる:日足では三尊に見えても、週足では上昇トレンド途中の小さな調整にすぎないことがあります。上位の時間軸から見る順番を固定しておくと迷いません。
- 大きな材料が出れば形は無効になる:決算や金融政策など強い材料が出たときは、チャートの形に関係なく値動きはそちらに従います。チャートは参加者心理の記録であって、未来の予定表ではありません。

私自身、三尊らしき形を見つけて身構えたのに、そのまま上がっていった、という経験は何度もあります。
ただ、外れたときにどこで諦めるかが最初から決まっているぶん、傷が浅く済むという実感はあります。
当てるための道具というより、負け方をあらかじめ決めておくための道具。それくらいの距離感で付き合うのが、ちょうどいいのだと思います。
まとめ
- ヘッドアンドショルダー(三尊天井)は、3つの山とネックラインでできた代表的な天井パターン
- 買いの勢いが3段階で弱っていく過程が、そのまま形として現れたもの
- 完成の合図はネックライン割れ。山が3つ見えただけでは未完成
- 下値目標 = ネックライン -(頭の高値 - ネックライン)
- 上下反転させた逆三尊は底のサイン。考え方は同じ
- 出来高の減少をあわせて確認し、損切りは右肩の上に置く
まずは自分がよく見る銘柄の日足チャートで、過去に大きく下げた場面までさかのぼってみてください。天井の付近に3つの山が残っていることが、思いのほか多いはずです。
よくある質問
ヘッドアンドショルダーは、いつ「完成」したと判断するのですか?
左肩・頭・右肩ができただけでは未完成で、ネックラインを明確に下抜けた時点で完成とみなします。ヒゲでわずかに割っただけの状態では判断せず、終値で抜けたかどうかを基準にすると誤認が減ります。
三尊天井とヘッドアンドショルダーは違うものですか?
同じ形の呼び方が違うだけです。日本では中央が高い3つの山を仏像の並びに見立てて三尊天井と呼び、英語圏では頭と両肩に見立ててヘッドアンドショルダーと呼びます。上下逆の形は逆三尊(インバース・ヘッドアンドショルダー)で、底値圏の反転パターンとして使われます。
形が崩れたときはどうすればいいですか
見送るのが基本です。右肩が頭を超えてしまったり、ネックラインを抜けずに上昇したりした場合、そのパターンは成立していません。「形に見えるから」と無理に当てはめると、根拠のない売買になります。他の根拠と重なる場面まで待つほうが確実です。
筆者:田中(田中家の投資道)。日米株と金を中心に運用する個人投資家。毎日の経済ニュースと、実際の保有銘柄の売買判断を公開しています。
【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資手法の売買を推奨するものではありません。テクニカル分析は将来の値動きを保証するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。


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