チャートに「38.2%」「61.8%」といった中途半端な数字の線が引かれているのを見たことはないでしょうか。これがフィボナッチです。名前は難しそうですが、やっていることは「上がった分のうち、何割戻ったか」を測っているだけです。
この記事では、フィボナッチの成り立ちから実際の引き方、そして使うときの注意点までを、専門用語をかみ砕きながら順番に説明します。
この記事でわかること
- フィボナッチ数列と黄金比の関係
- 38.2%・50%・61.8%という数字が意味するもの
- リトレースメント(押し目・戻りの目安)の引き方3ステップ
- エクスパンション(利益確定の目安)の考え方
- フィボナッチが効かない場面と、その対処法
フィボナッチとは? ウサギの数え方から生まれた数列
フィボナッチとは、13世紀イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチが紹介した数列のことです。ルールはとても単純で、直前の2つの数を足していくだけです。
1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233…
この数列には面白い性質があります。隣り合う数どうしで割り算をすると、数字が大きくなるほど一定の値に近づいていくのです。
- 89 ÷ 144 = 約0.618(隣どうし)
- 89 ÷ 233 = 約0.382(1つ飛ばし)
- 55 ÷ 233 = 約0.236(2つ飛ばし)
このうち0.618が、いわゆる黄金比です。ヒマワリの種の並び方、巻き貝の渦、名刺の縦横比など、自然界や人が「整っている」と感じるものに繰り返し現れる比率として知られています。相場でも、この比率を価格の変動幅に当てはめて使います。

なぜ相場でこの数字が効くのか、実のところ理論的に証明されているわけではありません。
ただ、世界中のトレーダーが同じ線を見て、同じ価格帯に注文を置いているという事実はあります。
「正しいから効く」というより「みんなが見ているから効いてしまう」性格の強い指標だと私は考えています。
相場で使う比率は主に4つ
フィボナッチ数列から導かれる比率はいくつもありますが、実際のチャート分析で使うのはほぼ次の4つです。
| 比率 | 呼び方 | 相場での位置づけ |
|---|---|---|
| 23.6% | 浅い押し | 勢いの強いトレンドで反発しやすい水準 |
| 38.2% | 標準的な押し | 最初に意識されることが多い第一関門 |
| 50% | 半値押し | フィボナッチ数ではないが最重要級 |
| 61.8% | 深い押し | ここを割るとトレンド転換を警戒する水準 |
このうち50%は、厳密にはフィボナッチ数列から出てくる数字ではありません。ただ「上げ幅のちょうど半分」は昔から半値押しとして意識されてきた水準で、実務ではフィボナッチとセットで表示されるのが一般的です。
フィボナッチ・リトレースメント:押し目・戻りの目安
もっともよく使われるのがリトレースメントです。リトレースメントは「引き返す」という意味で、上がった株価がどこまで下がったら反発しやすいかを測るものです。
引き方は3ステップ
- 直近のトレンドの起点(安値)を決める
- トレンドの終点(高値)を決める
- 安値から高値へ向けてツールをドラッグする
これだけで、23.6%・38.2%・50%・61.8%の水平線が自動的に引かれます。証券会社のチャートツールにはほぼ標準で搭載されている機能です。
上昇トレンドでは「押し目買い」の目安になる
株価が1,000円から2,000円まで上昇したとします。上げ幅は1,000円ですので、各水準は次のように計算できます。
- 38.2%押し = 2,000円 − 382円 = 1,618円
- 50%押し = 2,000円 − 500円 = 1,500円
- 61.8%押し = 2,000円 − 618円 = 1,382円
上昇の勢いが強いほど浅い位置(38.2%)で下げ止まり、勢いが弱いほど深い位置(61.8%)まで下げやすい、と覚えておくと判断しやすくなります。
下降トレンドでは「戻り売り」の目安になる
下げ相場では逆に、高値から安値へ向けてドラッグします。すると「どこまで戻したら再び下げやすいか」が見えてきます。戻りが61.8%を上に抜けてしまった場合は、下降トレンドそのものが終わった可能性を疑う場面です。

私が実際に注目しているのは「61.8%を割るかどうか」の一点です。
38.2%や50%で止まっているうちは、上昇トレンドの中のひと休みと考えられます。
ただ61.8%を明確に割り込むと、上げ幅のほとんどを吐き出したことになり、そのまま全戻しに向かうケースが体感的にも多いように感じます。押し目買いの最終防衛ラインとして意識しています。
フィボナッチ・エクスパンション:利益確定の目安
リトレースメントが「どこまで下がるか」を測る道具なら、エクスパンション(拡張)は「どこまで伸びるか」を測る道具です。押し目を付けて再び上昇し始めたときに、次の目標株価を出すために使います。
よく使われるのは127.2%と161.8%で、とくに161.8%は黄金比の逆数にあたり、目標値としてもっとも意識されます。先ほどの例で、1,500円(50%押し)から反発した場合はこうなります。
- 127.2%目標 = 1,500円 + 1,000円 × 1.272 = 2,772円
- 161.8%目標 = 1,500円 + 1,000円 × 1.618 = 3,118円
あらかじめ利益確定の候補を持っておけるため、「どこまで持つか」で迷いにくくなるのが利点です。
実践で使うときの3つのコツ
①「線」ではなく「ゾーン」で見る
38.2%が1,618円だとして、株価がぴったり1,618円で反発することはまずありません。1,600円〜1,640円といったように、多少の幅を持たせて「この価格帯」と捉えるほうが実用的です。
②他の根拠と重なる場所を狙う
フィボナッチ単体での精度は、それほど高いものではありません。威力を発揮するのは、他のテクニカル指標と重なったときです。
- 61.8%押しと25日移動平均線が同じ価格帯にある
- 38.2%押しが過去の高値・安値(水平線)と一致している
- その価格帯で過去に出来高が膨らんでいる
根拠が2つ3つ重なる場所は、それだけ多くの参加者が注文を置いている場所ということになります。
チャートパターンと組み合わせるのも有効です。たとえばヘッドアンドショルダー(三尊天井)のネックラインとフィボナッチの水準が重なっていれば、その価格帯はより強く意識されていると判断できます。
※ヘッドアンドショルダー:3つの山でできる代表的な天井のサイン。日本語では三尊天井と呼びます。詳しくはこちらの記事で解説しています。
③損切りラインをセットで決める
61.8%で買うなら、そこを明確に割り込んだ時点で「判断が外れた」ことになります。エントリー前に「どこで間違いを認めるか」を数字で決められる点こそ、フィボナッチを使う実務上の最大のメリットです。
フィボナッチの弱点と注意点
- 起点の取り方で線が変わる:どの安値・高値を選ぶかは人によって異なり、絶対の正解はありません。日足なら日足、週足なら週足と、時間軸ごとに基準を固定しておくのが現実的です。
- 後付けでは何でも当たって見える:過去のチャートを見れば、必ずどこかの線で反発しています。検証するなら、線を先に引いてから、その後の値動きで確かめてください。
- 急変相場やレンジでは機能しにくい:材料一発で急騰・急落した場面や、方向感のない持ち合いでは、そもそもトレンドの起点と終点が定まらず、線の意味が薄れます。

フィボナッチは「未来を当てる魔法の線」ではなく、「注文が集まりやすい場所の地図」だと考えるとしっくりきます。
地図があっても、実際に道を歩くのは自分です。外れたときにどうするかまで決めておくことが大前提になります。
私自身は、押し目買いの候補を絞り込む用途に限定して使っています。
まとめ
- フィボナッチは直前の2つの数を足す数列から生まれ、比率0.618(黄金比)が相場でも意識される
- 実務で使うのは23.6%・38.2%・50%・61.8%の4つ
- リトレースメントは押し目・戻りの目安、エクスパンションは利益確定の目安
- 線ではなくゾーンで捉え、移動平均線や水平線と重なる場所を狙う
- 起点の取り方で結果が変わるため、時間軸と引き方のルールを自分で固定しておく
フィボナッチは、覚えることが少ないわりに使える場面が多い指標です。まずは自分がよく見る銘柄のチャートで、直近の高値と安値に線を引いてみるところから始めてみてください。
よくある質問
フィボナッチはどの時間軸で引けばいいですか?
自分が取引する時間軸に合わせるのが基本です。数日から数週間の値動きを見るなら日足、より短い値動きを狙うなら1時間足や4時間足が目安になります。大切なのは、時間軸と起点の取り方を毎回変えないことです。ルールを固定しておかないと、都合のよい線を後から引いてしまいます。
23.6%・38.2%・50%・61.8%のうち、どれを見ればいいですか?
よく意識されるのは38.2%・50%・61.8%の3本です。浅い押し目で反発すれば勢いが強く、深く戻すほど勢いが弱いと読めます。ただし線そのものより、移動平均線や過去の高値・安値と重なる場所のほうが機能しやすいため、ゾーンとして捉えてください。
フィボナッチだけで売買を判断してもいいですか?
おすすめしません。フィボナッチは「どこで反転しやすいか」の目安を示すだけで、反転を保証するものではないためです。移動平均線や水平線など他の根拠と重なる場所に絞り、損切りの位置をあらかじめ決めたうえで使うのが現実的です。
筆者:田中(田中家の投資道)。日米株と金を中心に運用する個人投資家。毎日の経済ニュースと、実際の保有銘柄の売買判断を公開しています。
【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資手法の売買を推奨するものではありません。テクニカル分析は将来の値動きを保証するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。


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