2026年9月8日のマーケットは、ドル円が今年2月以来となる一時1ドル=154円台まで円高に振れる展開となりました。背景にあるのは、日銀の追加利上げ観測の高まりと、円キャリートレードを解消する動きです。
この記事では、中東情勢と原油、欧州の政治・経済、為替と金利、日本の景気指標まで、9月8日の主なニュースを要点だけ整理し、最後に金とドル円のテクニカル分析を含めた個人的な考察をまとめています。
この記事でわかること
- 米イラン対立の激化で、原油に先高観が強まった背景
- ドイツの州議会選挙で極右政党が勝利したことの影響と、7月鉱工業生産の落ち込み
- ドル円が一時154円台まで円高に振れた理由と、8月の外貨準備が過去最大の減少となった経緯
- 景気拡大74カ月「いざなみ超え」の中身と、実感が伴わない理由
- 金とドル円のテクニカル分析と、今後の投資スタンス
前回の記事:【2026年9月4日】ドル円155円台|米雇用・FRBと今日の市況考察
| 項目 | 9月8日の結果 | ポイント |
|---|---|---|
| ドル円 | 一時1ドル=154円台 | 今年2月以来の円高水準。日銀の追加利上げ観測と、円を借りて運用する取引の巻き戻しが背景 |
| 原油 | 先高観が強まる | 中東で船舶攻撃が激化すれば1バレル=120ドル、輸出が正常化すれば1バレル=80ドルとの見方 |
| 8月末の外貨準備 | 1兆2075億ドル(前月比マイナス6.18%) | 為替介入を反映し、減少率は2000年4月以降で過去最大 |
| 7月の景気動向指数(一致指数) | 120.6(前月比プラス1.7ポイント) | 2カ月連続の上昇。景気拡大は74カ月となり戦後最長を更新 |
| ドイツ 7月の鉱工業生産 | 前月比マイナス1.1% | 市場予想のプラス0.1%を下回る結果。自動車生産が9.2%減 |
| 個人向け国債(ネット証券4社) | 1~6月の販売額5400億円超 | 前年同期の4.4倍。若い世代を中心に買い手が広がる |
中東|米イラン対立の長期化で原油に先高観
IAEA イランに核関連の是正を要求
- IAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長「イランは核拡散防止条約加盟国であり義務をはたさなければならない」
- イランの高濃縮ウランの詳細を1年以上把握できず、極めて緊急に是正される必要があるとの認識
市場に原油先高観 長引く米イラン対立
- 中東で船舶攻撃が激化となれば1バレル=120ドルの可能性も
- 原油などの輸出が正常化すれば1バレル=80ドルもあり得る展開
- 天然ガス・石油精製品は供給ショックが原油市場より大きいとして、投資家に対しリスクヘッジの手段として天然ガス・石油精製品のロング(買い持ち)を推奨する声
イラン エネルギー施設への攻撃を示唆
- ガリバフ国会議長「我々の資産を攻撃すればこちらも攻撃する」
- ホルムズ海峡の船舶航行管理をめぐり、イラン・オマーンが数日以内に合意する可能性
- 市場では原油価格への上昇圧力が続くとの見方が支配的
※ホルムズ海峡…ペルシャ湾の出口にある狭い海峡で、海上輸送される世界の原油の約2割が通る要衝です。閉鎖や航行制限が意識されるだけで原油価格が動きます。詳しくは8月6日の記事でも取り上げています。
欧州|ドイツで極右が勝利、鉱工業生産も失速
ドイツ 州議会選挙で極右政党が勝利
- ザクセン・アンハルト州議会選挙で極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が勝利
- 得票率ではメルツ首相率いるキリスト教民主同盟を大きく引き離す結果
- 極右勢力の勝利はメルツ政権に打撃
- 国政運営や欧州全体に影響を与える可能性
ドイツ 7月の鉱工業生産は予想を下回るマイナス1.1%
- 7月の鉱工業生産指数は市場予想のプラス0.1%を下回るマイナス1.1%
- 自動車の製造ラインが一時的に止まった影響などから、自動車生産は9.2%の大幅なマイナス
- 一方、風力や太陽光発電の電力供給が増えるなど、エネルギー生産は4.7%のプラス
イギリス ジャガーが今後2年間で4000人削減へ
- 人員削減は17億ポンドのコスト削減計画の一環
- バラジCEO「競争や地政学的な不確実性が続く中での技術革新など大きな課題に直面」
EU グリーンランドに360億円投資 トランプ政権をけん制
- 重要鉱物資源や再生可能エネルギーなどの開発に活用
- グリーンランドとの関係強化が目的
- フォンデアライエン委員長「グリーンランドは信頼できる友人で戦略的な仲間だ」
出典:European Commission Press corner
為替・金利|円高進行と過去最大の外貨準備減
円高進行 今年2月以来の一時1ドル=154円台
- 市場では日銀が追加の利上げペースを加速させるとの見方が強まる
- 円キャリートレードを解消する動きが広がり、円買いドル売りが優勢に
- イランとオマーンの交渉が最終段階との報道を受け、有事のドル買いが後退したことも円高の要因
※円キャリートレード…金利の低い円を借りて、金利の高い通貨や資産で運用する取引です。解消する際は借りた円を買い戻すため、円高が進みやすくなります。155円台をつけた場面は9月4日の記事で取り上げています。
8月の外貨準備 過去最大の6%減
- 8月末の外貨準備高は前月比マイナス6.18%の1兆2075億ドル
- 政府・日銀が7月30日以降に実施した為替介入を反映し、減少率は2000年4月以降で過去最大
- 財務省によると7月30日から8月26日までの円買いドル売りの介入額は、月次ベースで過去最大の総額15兆3993億円
※日米の協調介入の経緯は8月3日の記事で取り上げています。
貯蓄預金 期間限定で金利2倍
- みずほ銀行は「みずほ楽天カード」の2%のポイント還元を恒久化
- 3メガバンクで初めて約16年半ぶりに復活させた貯蓄預金の金利を、12月まで2倍に
- 残高に応じて段階的に金利があがる仕組みで、残高10万円以上で普通預金より高い金利
日本経済|いざなみ超えの74カ月
景気動向指数が2カ月連続上昇 景気拡大は74カ月に
- 7月の景気動向指数は、景気の動向を示す一致指数が前月比プラス1.7ポイントの120.6と2カ月連続のプラス
- 投資財出荷指数や小売販売額などが全体を押し上げ
- 基調判断は「改善を示している」に据え置き
- 2020年6月から続く景気拡大が74カ月を経過し、戦後最長となるいざなみ景気の期間を超える
- 物価高などで、これまでの景気拡張期よりも消費者は成長を実感しにくいとの指摘も
出典:内閣府 景気動向指数
個人向け国債 ネット証券の販売が4倍超 若年層が担い手に
- ネット証券が個人向け国債の販売を伸ばしている
- 主要4社の2026年1~6月の販売額は5400億円超と、前年同期の4.4倍
- 利回りを確保できる安全資産として、若年層を中心に投資家のすそ野が広がる
出典:財務省 個人向け国債
尾道造船が無人艇を量産へ 自衛隊・米軍に提案
- 軍用品輸送を想定した船で、災害時の支援物資の運搬にも使える
- 防衛向けの艦艇はこれまで重工大手が手掛けてきた分野
- 商船専業の中堅造船も、デュアルユース(軍民両用)分野に踏み込む動き
米国・企業|大学基金の運用が好調、ファーウェイは3つ折り
アメリカ 主要大学の資産運用が好調
- ハイテク企業や未公開株への投資が資金の運用リターンを押し上げ
- S&P500を大幅に上回る運用益も
- ハーバード大の基金はスペースX株を約22億ドル(3400億円)分保有(6月末時点)
ファーウェイ 3つ折りの新型スマホを発表
- 価格は46万5000円から
- プライバシー機能などを高める
- 新型チップを搭載し、消費電力を抑えて演算能力を向上
考察|原油高と金利上昇のなかで、ドル安・円高をどう見るか
中東の緊張で原油に上昇圧力 金利は高いのにドルは安い

米軍はイラン革命防衛隊関連の複数のイランタンカーへの攻撃を再開。
また、イエメンの親イラン武装組織フーシ派がサウジアラビアのエネルギー施設を攻撃。
一部施設の操業が停止し、火災も発生したことで、中東の戦闘が産油国へ拡大する警戒が強まった。
フーシ派がサウジ本土の生産・精製・流通施設まで攻撃し始めると、ホルムズ海峡を迂回しても供給能力そのものが削られる可能性が。
これを受けて原油価格には上昇圧力。
原油価格が上昇し、インフレ再燃懸念➡FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ観測➡米国債利回り上昇。
しかしドル安。
米金利が高値圏で推移しているがドルが安いのはドルの信用が下がってきているから。
金利が上がって金も一時的には下がっているが、下落のトレンドラインをサポートにして再度上を目指していきそうではある。(下記チャート参照)
ドル円は155円を明確に下抜け 短期はショート目線が優位



金利上昇で株の上値は重い 金は「攻めの資産」として買われている

アメリカの金利も日本の金利も上昇しているため、株の上値は重たい。
しかし、企業の業績はいいので金利の重しさえとれれば再び上昇の勢いは戻りそう。
リスクをとって株式に投資するより無リスクで今の金利をもらえると思えば、資産が大きい人にとっては株式より国債に向かう。
はずなのだが、金利が高くなっているのにあまり国債も買われていない。
それはこれだけの金利でもインフレ率はもっと高くなると市場は思っているのだろう。
このまま金利が上昇していくといくら株式の業績がいいとはいえ、株式の資金は国債に流れて株式の調整があっても不思議ではない。
今はその受け皿として金にも資金が流れているため、金利が高くなった今でもあまり下落していないのだろう。
株式が暴落する時には追証のためにあらゆる資産が売られるため、金も売られるが、今はヘッジとしての金より攻めの資産としての要素が大きい。
まとめ
- 中東は米イランの対立が続き、フーシ派によるサウジのエネルギー施設攻撃で、原油には上昇圧力がかかりやすい地合い
- 原油高はインフレ再燃懸念からFRBの利上げ観測につながるが、米金利が高いのにドルは安い。ドルの信用低下が背景
- ドル円は155円を明確に下抜け。短期的には155円がレジスタンス、160円を明確に超えるまではショート目線が優位
- 日米ともに金利上昇で株の上値は重い。ただし企業業績は良く、金利の重しが取れれば再び上昇に向かう可能性
- 金は今、ヘッジではなく攻めの資産として買われている。短期の値動きに振り回されず、長期の積立と分散を続けることが大事
よくある質問
円キャリートレードの解消が進むと、なぜ円高になるのですか?
円キャリートレードは、金利の低い円を借りて、金利の高い通貨や資産で運用する取引です。この取引をやめるときは、借りていた円を返すために円を買い戻す必要があります。買い戻しが一斉に起きると円買いが膨らみ、円高が進みやすくなります。今回は日銀の追加利上げ観測が強まったことが、その引き金になりました。
外貨準備が過去最大の減少になったのは、悪いことですか?
今回の減少は、政府・日銀が円買いドル売りの為替介入を行い、その原資としてドル資産を取り崩したことが主な理由です。介入した分だけ外貨準備が減るのは仕組み上当然のことで、それ自体が日本の信用低下を意味するわけではありません。ただし介入に使える資金には限りがあるため、再び円安が進んだときにどこまで対応できるかは見ておきたいところです。
景気拡大が戦後最長なのに、生活が良くなった実感がないのはなぜですか?
景気動向指数が、生産や出荷、販売といった企業側の数字を中心に作られているためです。物価が上がって名目の金額が膨らめば指数も上がりますが、賃金の伸びが物価に追いつかなければ家計の実感は良くなりません。記事中でも、物価高でこれまでの景気拡張期より成長を実感しにくいとの指摘が紹介されています。
筆者:田中(田中家の投資道)。日米株と金を中心に運用する個人投資家。毎日の経済ニュースと、実際の保有銘柄の売買判断を公開しています。
【免責事項】本記事は公開情報をもとにした筆者個人の見解であり、特定の銘柄や投資手法の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


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