2026年9月4日のマーケットは、ドル円が一時155円台まで急落する荒い展開となりました。背景にあるのは、日銀の追加利上げ観測と、FRB(米連邦準備制度理事会)高官から相次いだ利上げに慎重な発言です。
この記事では、当日発表された米国の経済指標と主な企業ニュースを要点だけ整理し、最後にドル円のテクニカル分析を含めた個人的な考察をまとめています。
この記事でわかること
- 米雇用・景況感・貿易赤字など、9月4日の米経済指標の要点
- FRB高官の発言と、ドル円155円台への急落の背景
- エヌビディア・日立・JAL・大和ハウスなど注目の企業ニュース
- ドル円のテクニカル分析と、今後のシナリオ・投資スタンス
前回の記事:長期金利3%とNY原油急騰 日経平均の下値メドは59,000円【2026年9月2日】
| 項目 | 9月4日の結果 | ポイント |
|---|---|---|
| ドル円 | 一時155円台 | 日銀の追加利上げ観測と、FRB高官の利上げに慎重な発言で急落 |
| 米人員削減計画(8月) | 5万2,881人 | 前年同月比38%減。8月として4年ぶりの低水準 |
| 米新規失業保険申請 | 20万6,000件 | 前週比2,000件増も、低い水準を維持 |
| ISM非製造業景気指数(8月) | 55.4 | 前月比プラス1.3ポイント。26カ月連続で50超 |
| 米貿易赤字 | 886億ドル | 前月比24%増。輸入の増加が主因 |
| FRBのスタンス | 据え置き示唆 | ウォラー理事「インフレが減速すれば金利は据え置き」 |
米経済|雇用は堅調、貿易赤字は拡大
人員削減数は4年ぶりの低水準
- 8月の人員削減計画は前年同月比38%減の5万2,881人
- 8月としては4年ぶりの低水準
- 先週1週間の新規失業保険申請件数は前週比2,000件増の20万6,000件と、依然として低い水準
出典:Challenger, Gray & Christmas/米労働省 雇用保険統計
ISM非製造業景気指数は55.4に改善
- 8月のISM非製造業景気指数は前月比プラス1.3ポイントの55.4と、市場予想を上回る結果
- 好不況の分かれ目となる50を26カ月連続で上回る水準
貿易統計|輸入増で赤字が24%拡大
- モノとサービスを合わせた貿易赤字は前月比24%増の886億ドル
- 輸出は2.1%減、輸入は2.8%増
- 国・地域別の赤字は対日本51%、対台湾31%、対メキシコ23%、対中国11%とそれぞれ前月から拡大
FRB|インフレが減速すれば金利は据え置き(ウォラー理事)
- 原油高や関税による物価の押し上げ効果は一時的
- 持続的な上昇圧力とは判断できない
- ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も利上げに慎重な発言
出典:FRB スピーチ・証言
為替|ドル円が一時155円台まで急落
- 日銀の追加利上げ観測の高まりが背景
- ベッセント財務長官が、日本に対し「過度な円安に対処するための断固たる措置を強く支持する」と発言
- 米で利上げ期待が後退したことも円買い材料に
注目の企業ニュース
ブラックストーン|2四半期連続で解約制限か
- 運用資産770億ドルの旗艦ファンドは、投資家から10%の解約を請求されたが、半分しか解約を認めないと通知
エヌビディア|新興AI企業を129億ドルで買収
- 買収されたハギングフェイスは、オープン型のAIモデルを共有するプラットフォームを運営し、1,800万人超の開発者が利用
- ファンCEO「世界中の開発者や機関がAIを利用できる機会を広げる」
大和ハウス|23県から撤退し高価格帯へシフト
- 新築一戸建て住宅事業部門は45都道府県に拠点を持つが、23道県から撤退
- 2027年4月に東京・大阪などを中心に再編
- 注文住宅は最低受注額を5,000万円に設定し、1億円以上の販売戸数の倍増を目指す
- 資材価格や人件費が高騰する中、単価を引き上げて収益性を高めたい考え
日立製作所|データセンター向け新サービスを北米で開始
- AIを活用し、データセンター設備を一元管理する新サービスを北米で開始
- 徳永社長「電力・冷却・ITを横断的に統合し、フィジカルAIによる自律運用と全体最適化を実現する」
- インフラ運用のノウハウと最先端AIで、データセンターの安定稼働と省電力化を支援
- 日本では2027年1月に、国内需要を反映したサービスを開始予定
JAL|大韓航空と戦略的パートナーシップを締結
- 大韓航空とアシアナ航空が統合する機会を捉えて関係を強化
- 今後は貨物事業やクレジットカード事業などの連携も検討
- 一方で、ヤマトHDとの国内貨物専用機の運航は2027年6月ごろまでに終了
- トラック運転手不足への対応として2024年に運航を始めたが、燃油価格の高騰などで採算が悪化したため
出典:JAL プレスリリース
オープンAI|次世代モデル「GPT-6アストラ」を投入
- GPT-6アストラの提供を開始
- リサーチやコーディングなどで複雑な作業が発生しても、性能向上で対応
- 指示に従っているかをチェックするモニタリング機能を搭載
出典:OpenAI News
通商|カナダ首相が米に歩み寄りを求める
- カーニー首相「カナダの勤労者世帯や企業だけでなく、アメリカの企業や消費者にも利益になる合意は可能だ」
- ベッセント財務長官やラトニック商務長官が「国内政治を理由にカナダ側が交渉を離脱した」などと非難したことについて、カーニー首相は「選挙で選ばれていない米閣僚がカナダ政治の専門家とは思わない」と一蹴
- トランプ大統領は「私を敵に仕立て上げるのは大いに結構」と不快感をあらわに
出典:Prime Minister of Canada News
※カナダの報復関税をめぐる経緯は8月26日の記事で取り上げています。
考察|ドル安の流れと、円高局面での向き合い方
短期は誰にも分からない。長期ではドルは弱くなる

アメリカの雇用環境は、数字の上では良く見える。
FRBの使命でもある「雇用の安定」が実際にどうかは分からないが、少なくとも指標上は悪くない。あとは物価の安定次第。
ウォラー理事は「インフレが減速すれば金利は据え置き」との考えで、理事以外からも利上げに慎重な発言が相次いでいる。
少し前まではウォーシュ議長が慎重で他が利上げ推進だったのに、ほんの数カ月もしないうちに意見は逆転している。
ここからも分かるように、短期のことは誰にも分からない。
短期のこうした動きはノイズで、長期で見ればアメリカのドルは弱くなっていくと思う。
ドル資産の目減りに備え、金とビットコインをコツコツ買う

アメリカがイランに制裁を科す中、中国やロシア、中東諸国はイラン側についている。
アメリカを支持しているのは日本だけではないか。
アメリカが国家崩壊に近づいていくと、一番影響を受けるのは日本。
「円をドル資産に変えておくのがいい」とは言われるが、そのドル自体の価値も低下する可能性を考慮して、個人的には中長期で金とビットコインをコツコツ買っている。
一部の国では原油の決済がドルに代わって人民元で行われているようだが、中国という国の性質上、元で資産を持とうと思う国や個人は少ないだろう。
中国がドルに代わって通貨の覇権を取ろうとしている動きは、中央銀行の金買いに見て取れる。
現在の高金利の市場環境でも金が底堅いことを見ると、まだまだ金のポテンシャルは高いと思う。
注目は雇用統計よりCPI

本日の雇用統計、来週のCPI(消費者物価指数)・FOMC(連邦公開市場委員会)と重要な経済指標が続くが、雇用統計よりも物価のCPIの方が注目されるのではないか。
CPIの結果次第ではFOMCでの利上げ材料に直結するため、要注目。
ウォーシュ議長のタカ派発言で利上げ観測が高まりドル円は上昇したが、ベッセント財務長官からすれば円安は望ましくないため、他のFRBメンバーがその火消しに向かったようにも思えた。
中間選挙も近いため、トランプ大統領に忖度して利下げをすればドルの信認が低下し一気にドル安が進むかもしれないが、そこまではせず据え置きと見ている。
日銀の利上げが日本経済に与える影響

アメリカの圧力で日銀も利上げをせざるを得なくなり、利上げを決定。
日本の政策をアメリカの圧力で決めることには違和感がある。
日本経済にとっては、住宅ローンの上昇により家計は圧迫され、企業の借り入れも負担になる。
個人消費は落ち込み、株安になる確率も高まる。
株安になれば逆資産効果で富裕層の消費行動も落ち込む。
円高になればインバウンド需要も減り、それも消費の冷え込みにつながる。
輸入物価のコストは下がるが、一度上がったモノの価格は下がらない。
利上げにより金利は上昇し、インフレもとどまることを知らない。
インフレに対応した行動をしないと、これまで通りの生活では苦しくなる一方。
今からでも少しずつ行動するのが望ましい。
アメリカの貿易赤字は対日本で51%増。これは円安による影響もあるため、アメリカがこれ以上の円安を容認できない一因かもしれない。
ドル円のテクニカル分析|160円がレジスタンス、155円がサポート

日足のフィボナッチ50%で、介入があったのかと思うくらいの下落(チャート①)。
これで160円がレジスタンスとして意識され、サポートは155円。
日足でヘッドアンドショルダーを形成しつつあり、155円を下に抜けると一気に円高に走る可能性もある(チャート②)。
強烈な円高の動きのため、ロングを持つ優位性はそこまで高くない。
かといって、ここからショートを持つのもリスクリワードが低い。
短期的には、直近の高値からのフィボナッチ0.618と200日移動平均線が重なる158.5円が強いレジスタンスラインになる(チャート③)。
シナリオとしては、ここで跳ね返されてネックラインの155円を割り、短期的には円高局面と見ている。



※フィボナッチ=相場がどこまで押す(戻る)かの目安を測るテクニカル指標。詳しくはフィボナッチの基本を解説した記事で紹介しています。
※ヘッドアンドショルダー(三尊天井)=天井圏で現れる代表的な反転パターン。ネックラインを下に抜けると下落が加速しやすくなります。詳しくはヘッドアンドショルダーの解説記事で紹介しています。
※レジスタンス=上値を抑えられやすい価格帯、サポート=下値を支えられやすい価格帯のことです。
NISAでオルカン・S&P500を積み立てている人へ

NISAでオルカンやS&P500を買っている人は、為替の影響で含み益が減ったり含み損になったりするかもしれない。
でも、そんな時こそ将来の果実のために買い向かうことが大事。
投資は余剰資金で、長期でコツコツ積み立てれば結果はついてくる。
まとめ|9月4日のポイント
- 米雇用は数字上は堅調。8月の人員削減は4年ぶりの低水準で、新規失業保険申請も低位で推移
- FRB高官からは利上げに慎重な発言が相次ぎ、米金利の先高観は後退。一方で日銀の追加利上げ観測が強まり、ドル円は一時155円台へ
- ドル円は160円がレジスタンス、155円がサポート。155円割れなら短期的に円高が加速する可能性
- 短期のノイズに振り回されず、長期の積立と資産の分散を淡々と続けることが大事
よくある質問
レジスタンスとサポートとは何ですか?
レジスタンスは上値を抑えられやすい価格帯、サポートは下値を支えられやすい価格帯のことです。多くの参加者が意識するため、そこで値動きが止まったり反転したりしやすくなります。この記事では、ドル円は160円がレジスタンス、155円がサポートと見ています。
米雇用が堅調なのに、なぜドル円は下がったのですか?
雇用の数字よりも、金利の見通しの方が為替に効いたためです。FRB高官から利上げに慎重な発言が相次いで米金利の先高観が後退し、同時に日銀の追加利上げ観測が強まりました。日米の金利差が縮まる方向に見方が動いたことで、ドル円は一時155円台まで下げています。
円高になると、オルカンやS&P500の積立はやめた方がいいですか?
この記事では、やめるのではなく続けることを大切だと考えています。円高で円換算の評価額が下がる局面は、同じ金額でより多くの口数を買えるタイミングでもあるためです。ただし前提として、余剰資金で行うこと、長期で分散して積み立てることが条件になります。最終的な判断はご自身の状況に合わせて行ってください。
筆者:田中(田中家の投資道)。日米株と金を中心に運用する個人投資家。毎日の経済ニュースと、実際の保有銘柄の売買判断を公開しています。
【免責事項】本記事は公開情報をもとにした筆者個人の見解であり、特定の銘柄や投資手法の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


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